密着性

密着性とは、めっき皮膜、塗膜、接着層などが下地の材料にしっかり付着し、使用中にはがれにくい性質のことです。
表面処理や塗装の分野では非常に重要な考え方で、見た目がきれいでも密着性が不足していると、はく離、ふくれ、めくれ、局部的な腐食などの不具合につながります。
めっきのJISでは、密着性を確認するために、やすり試験、テープ試験、曲げ試験、引張試験、熱試験など、さまざまな評価方法が規定されています。

密着性が重要になる理由は、表面処理の性能が「皮膜そのものの性能」だけでなく、「下地にどれだけ安定して付いているか」に大きく左右されるからです。
たとえば防錆用のめっきや塗装でも、密着性が悪ければ一部がはがれ、そこから水分や酸素が入り込んで腐食が進みやすくなります。
めっきに関する解説でも、皮膜の機能を発揮させるには使用環境で皮膜がはく離しないことが必要であり、密着不良は膜厚ばらつきや腐食と並ぶ代表的なトラブルとされています。

密着性を左右する要因は一つではありません。
代表的なのは、素材の種類、表面の清浄度、油分や酸化物の有無、表面粗さ、前処理方法、処理条件、乾燥や焼付け条件などです。
塗膜に関する資料でも、被塗面の処理が不十分だったり、塗装工程や焼付条件が不適切だったりすると、塗膜の密着だけでなく、化学的・物理的・機械的性質も大きく低下するとされています。
つまり密着性は、材料選びだけではなく、前処理や施工条件まで含めた総合的な品質で決まる性質です。

表面処理の現場では、前処理が密着性の成否を左右する場面が多くあります。
めっきでは、素材表面にあるスケール、酸化皮膜、加工層、汚れ、偏析、異物などが密着を妨げる要因になりやすく、それぞれに応じた洗浄、酸洗い、活性化などの前処理が必要です。
プラスチックめっきの分野でも、表面を親水化し粗面化するエッチング工程が、密着性向上のために最も重要な工程の一つとされています。

密着性は、用途によって求められるレベルも変わります。
装飾用途では見た目の均一性が重視されますが、機械部品や締結部品では、曲げ、衝撃、熱変化、摩擦などに耐えながら皮膜がはがれないことが重要です。
そのため、電気亜鉛めっき鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板でも、JISでは曲げ試験などによる密着性評価が規定されています。
つまり密着性は、単なる外観品質ではなく、製品の耐久性や信頼性を左右する性能項目の一つです。

密着性を高めるためには、素材に合った前処理を選び、表面状態を整え、処理条件を適切に管理することが大切です。
表面処理を選ぶときも、単に防錆性や見た目だけでなく、「どの材料に、どの工程で、どの環境で使うか」を踏まえて密着性まで考える必要があります。
密着性とは、表面処理や塗膜が本来の性能を発揮するための土台であり、品質の安定、耐久性の確保、トラブル防止に欠かせない重要な考え方です。

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