耐摩耗性

耐摩耗性とは、材料や部品の表面が摩擦や接触によってすり減りにくい性質のことです。
そもそも摩耗は、トライボロジー分野で「摩擦による固体表面部分の逐次損失」と説明されており、部品表面が少しずつ失われていく現象を指します。
つまり耐摩耗性が高い部品ほど、こすれ合い、転がり、異物のかみ込みなどがあっても表面が傷みにくく、寸法や機能を保ちやすいということになります。

耐摩耗性が重要になるのは、機械部品の損傷の多くが表面から始まるためです。
表面硬化や表面改質に関する解説でも、機械部品の摩耗や欠損は主として部品表面に生じる現象であり、その対策として表面硬化や表面改質が有効だとされています。
たとえば、シャフト、ピン、ギヤ、摺動部品、締結部品まわりの接触面では、表面が摩耗すると、がたつき、精度低下、異音、締結不良、寿命低下などにつながることがあります。
ネジやボルトそのものも、繰り返しの締緩や接触条件によって表面が傷むため、用途によっては耐摩耗性が無視できない性能になります。

耐摩耗性は、単に「硬ければ高い」とは限りません。
もちろん表面硬さは重要な要素ですが、実際の摩耗は、相手材との組み合わせ、荷重、すべり速度、潤滑の有無、表面粗さ、温度、腐食環境などの影響を受けます。
摩耗には、表面同士が付着して起こる凝着摩耗、硬い粒子で削られるアブレシブ摩耗、繰り返し荷重で進む疲労摩耗など複数の形態があり、どの摩耗が起こりやすいかによって、必要な対策も変わります。
そのため、耐摩耗性は材料単独の性質というより、使用条件の中で評価する性能として考えることが大切です。

耐摩耗性を高める方法としては、表面硬化処理、拡散浸透処理、めっきやコーティング、表面改質などがあります。
表面改質技術の解説では、高周波焼入れのように表面だけを硬化させて内部の靱性を保ちながら耐摩耗性を向上させる方法や、浸炭・窒化のように元素を表面へ拡散させて耐摩耗性や耐疲労性を高める方法が紹介されています。
また、めっきやコーティングも、耐食性だけでなく耐摩耗性などの機能を与える表面処理として広く用いられています。
つまり、耐摩耗性を高めるには、材質の見直しだけでなく、表面処理や熱処理の選び方も重要です。

部品を選定するときは、単に硬度を見るだけでなく、どのような摩耗が起こるのか、相手材は何か、潤滑条件はどうか、屋内外や腐食環境の影響はあるかまで含めて考える必要があります。
耐摩耗性とは、部品の表面を守り、精度、寿命、信頼性を支える基本性能の一つです。
用途に合った材質や表面処理を選ぶことで、摩耗トラブルを減らし、製品全体の品質向上につなげやすくなります。

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